斜里海浜のサケ・マス釣りを考えるシンポジウムを開催しました!(R5.9.2)

更新日:2024年02月13日

1.日時

令和5年9月2日13:00-17:03

2.場所

ゆめホール知床公民館ホール

3.参加者

106名

4.内容要旨

(1)ご挨拶

山内浩彰町長

サケ・マスはこの地域にとって最も身近で大切な魚ですが、最近では資源状態が不安定になっています。さらにサケ・マスを釣る人が増加し、海浜域はオーバーユース気味になっており、一部にはルール違反等の問題も発生しています。そのような経過で、昨年度は海浜利用適正化検討協議会によりサケ・マス釣りの適正化に向けた調査・検討が行われ、本年2月に町に報告書と提言書が提出されました。その提言に基づいてローカル・ルールの検討を進めており、今回のシンポジウムのテーマでもあります。本日は講師の方々から先進的な知見や事例、お考えをご紹介頂いて議論を深めていきたいので、よろしくお願い致します。

 

(2)ローカル・ルール検討の経過について

斜里町 森高志

ローカル・ルール検討に至る背景、検討の経過、ルール暫定版の内容について説明しました。今後の検討方法については、令和5年度中にアンケートや実態調査等を行い、令和6年度には竿の数と釣獲尾数を含めた確定版ルールを設けることを説明しました。

 

(3)知床での釣りとヒグマ

知床財団 伊集院彩暮氏

知床半島沿岸で発生している釣り絡みのヒグマの出没事例や、幌別川での事故防止の取り組みの事例が紹介されました。また釣り人へのお願いとして、1)ヒグマ出没時は全ての荷物を持って退避、2)荷物や釣果は身に付ける、3)魚の残滓や釣り餌、ゴミは全て持ち帰る、4常に周囲を警戒する、の4点が説明されました。

 

(4)漁師による資源と環境への取り組み

北洋共同漁業部 伊藤正吉氏

漁業者によるゴミ拾いや魚道清掃の取り組み等が紹介されました。さらに増殖事業費負担金が漁獲の8.6%であり、漁業者にとって重い負担であること、レジャーの域を超えた釣りはやめてほしいこと、漁業者による自主規制期間は釣りも禁止にしてほしいこと等が発言されました。

 

(5)サケ・マスの釣り方あれこれ

臼井平氏

サケ・マス釣りの魅力や方法、仕掛けの工夫等が紹介されました。さらに多くの場所でサケ・マス釣りが歓迎されていないこと、釣りを続けるために釣り人自身が解決に向けて考えてほしいこと等が発言されました。

 

(6)河口規制を行った自然産卵河川での調査

さけます内水試 越野陽介氏

自然産卵河川で河口規制が行われている経緯や、規制河川で行っている調査の内容、多くのサケが自然産卵し、春には稚魚が川を降りていることが調査で明らかになりつつあること等が紹介されました。今後も調査を継続し、それに伴って規制も継続されることについて、理解や協力をお願いしたいことについても発言されました。

 

(7)芦之湖の遊漁と環境保全の取り組み

芦之湖漁協 結城陽介氏

芦之湖での遊漁管理のあらまし、資源保護や環境保全の取り組み、禁漁区設定の経過等についてお話し頂きました。漁協やボート事業者、町民、釣り人、行政が共存をめざして同じ方向を向いていることにより、良い環境が維持できていることについてもご紹介頂きました。

 

(8)パネルディスカッション

演者に加えて、斜里遊漁振興協議会 久保耕一郎氏、知床斜里町観光協会 新村武志氏

森:久保会長のところには釣り人や町民からの声も集まりやすいと思います。今回のローカル・ルール検討の動きに対して、どのような声を聞かれていますか。

久保氏:地元の釣り人は被害者です。静かだった釣り場に、外から人が来ることで問題発生し、立ち入り禁止になっています。本来は管理者や権限を持っている機関がしっかり管理しなければならない。最近の取り組みで、浜はだいぶ良くなりました。資源や環境を守りつつ釣りも楽しんでもらう、バランスを取りながら時間をかけてでも進めていく必要があります。

 

森:遠方から来訪する釣り人は、大きくは「観光客」ともいえますが、観光協会としてどのように捉えていますか。

新村氏:マナーは近年少し良くなってきていますが、ルールができることは歓迎です。地元の住民が怖くて浜に近寄れないのは問題です。ガイド業者が釣りをメニューに出来るくらいになってほしいです。レジャーとしての釣りが楽しく釣りが出来るようになれば良いと思います。

 

森:芦之湖と斜里を比べて、今日のシンポジウムで感じられたことや、提案などありますか。

結城氏:想像よりも大変な現場と感じました。提案としては、イベント的なゴミ拾いが考えられます。芦之湖では子供のころからゴミを拾うのが習慣になっています。また数は少ないがゴミ箱も設置しています。芦之湖側も斜里の取り組みに注目し、学んでいきたいです。

 

森:尾数制限を考える場合に「資源」の視点も必要でしょうか。また、ふ化放流事業が税金で行われている、という話を聞きますが、実際はどうでしょうか。

越野氏:マスの資源は本当に危機的なので、ローカル・ルールの柔軟性に期待したいです。試験研究機関としては、しっかり情報提供していくことも必要です。回帰しているサケの8-9割が人工ふ化放流されたものですが、その放流経費については、試験研究的なものを除いて漁業者の負担金で賄われています。

 

森:ホロベツ川を巡るクマと釣り人の対応の経験からの助言はありますか。

伊集院氏:情報発信の難しさがあります。規制しても知らないで来てしまう人が一定割合います。そういう意味でローカル・ルールに期待しています。

 

森:SNSの発信は勇気がいると思います。漁業者の考え方も、全てが伊藤さんのレベルまでいっているわけではないと思いますが、お考えはありますか。

伊藤氏:若い人に伝えるにはSNSが必須です。漁業者に向けた発信の意味合いもあります。漁業者の考え方もだいぶ変わってきました。資源が一番大事です。ルールが多くの人に理解され、守られるようになれば良いと思います。

 

森:釣り人からは尾数制限に対してどのような反応が予想されますか。

臼井氏:サケの価値の感じ方に大きな乖離があります。資源を作るために漁業関係者は非常に努力して、資源管理も行っています。それを軽く考えている釣り人がいます。サケは安くない、スペシャルな魚だと認識して、大切に扱ってほしいです。関係者みんなに有益で、共有できる最大公約数的なルール作りを期待しています。

 

(9)会場質疑

質問:漁師が禁漁しているのに釣りが出来る、竿を延々と並べる、食べきれないほど釣ることに、漁業者として憤りがあります。

回答:様々な立場の方がどう考えているかを知るものシンポジウムの目的です。竿の数や尾数はローカル・ルールで検討しています。ただ資源面を考慮した規制は漁業調整規則や委員会指示などで行うものと認識しています。(森)

 

質問:私は住民の立場で参加しています。テレビや雑誌では釣り人向けの釣り情報が多いのですが、住民が困っていること、迷惑していることも伝えてほしいです。

回答:町としても発信を考えていきたいです。(森)

 

質問:ルール運用上のモニタリングの計画はありますか。

回答:昨年、今年と関係機関で網羅的な調査を行っています。今後は抽出調査が可能か検討することになると思います。(森)

 

質問:私は町民であり、釣り人としての立場で、ルールは賛成です。ただマナーを守らないのは町外の釣り人です。テントの張りっ放しなどが無くなっていないのが現実です。また網走の場所取りも見るに堪えないのですが、取り組みの拡大はしないのでしょうか。

回答:斜里の中でも区域的な濃淡があります。海岸を実際に歩いての啓発と杭抜きを強化していきたいです。他地域の関係者も今日来場しています。取り組み拡大にむけて情報交換していきたいです。(森)

 

質問:私は釣り人で、今日は北見から来ています。説明のルールでは効果が限定的です。迷惑な行為には罰則を設けたルールとするべきです。

回答:町の権限で出来ることには限りがあり、大部分がお願いベースになります。竿の数は本来は漁業調整規則で定めるべきなので、その点は北海道に申し入れしていきたいです。(森)

 

質問:サケの減少は温暖化が原因ではないでしょうか。

回答:サケは冷水性の魚なので、温暖化は広い意味では影響があります。他にも様々な要素が関係していると考えられます。環境の変化に対応するためにも自然産卵の保護が大切です。(越野氏)

 

質問:釣り人から意見を聞く場面が少ないなかで、規制などが決まっていくのは良くないと思います。

回答:ローカル・ルールはそのようなことが無いように、今回のようなシンポジウム、アンケート、さらに釣り団体等も入った意見交換を行いながら進めていきたいです。(森)

 

(10)閉会ご挨拶

茂木部長

本日は演者の方から様々なお話しを頂き、パネルディスカッションで掘り下げることができました。今後、ローカル・ルールを確定版に向けて、頂いたご意見を反映させていきたいです。ローカル・ルールに取り組んだ先には、新しい海浜利用の環境になるかと思います。ご来場の皆様、そしてパネリストの皆様、関係するすべての皆様にお礼を申し上げます。

 

 

5.会場のアンケートボードの結果(パネルディスカッション時に紹介)

Q1.斜里サケ・マス釣りローカル・ルールの策定を進めていることについてどう思いますか?

選択肢

回答者数

大変望ましい 63
望ましい 9
どちらでもない 0
非常に望ましくない 0
わからない 0

Q2.サケ・マス釣りの釣竿の本数に関するお願いをすることを検討していますが、本数の上限を何本にするのが良いと思いますか?

選択肢 回答者数
1本 30
2本 28
3本 10
4本 0
5本 3
6本以上 3
上限を設けるべきではない 0
わからない 1

Q3.一日に持ち帰るサケ・マスの尾数の上限に関するお願いをすることを検討していますが、尾数の上限を何尾にするのが良いと思いますか?

選択肢

回答者数

1尾 26
2尾 18
3尾 19
4尾 0
5尾 0
6尾以上 0
上限を設けるべきではない 0
わからない 7
6.会場の様子